
Google Cloud の予算アラートは、従量課金制による予期せぬ高額請求を防ぐ強力なツールです。設定ミスやリソース無駄遣いのリスクに対し、利用状況を把握し、安心して運用するための手順を解説します。
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目次
Google Cloud 予算アラートとは?仕組みとメリット
次に、 Google Cloud の予算アラートとは何かを解説しますが、その前に Google Cloud の料金体系について理解しておきましょう。
Google Cloud は従量課金制のサービスであり、使えば使うほど料金が高くなる仕組みとなっています。そのため、誤った使い方をしている場合、思いがけない高額請求が発生するリスクがあります。
そこで、効果を発揮するのが予算アラートです。予算アラートは利用料金が一定額に達した場合に、ユーザーに対して自動通知(アラート)を送る仕組みのことであり、アラートが送付される閾値は任意の値に設定することが可能なため、自社の状況に合わせて金額をカスタマイズできます。本来、 Google Cloud の利用料金は管理画面から確認するのが一般的ですが、これでは毎回コンソールを開く手間が発生してしまいます。その点、予算アラートであれば自動的に通知を送ってくれるため、工数を掛けずにサービスの過剰利用を検知できます。
このように、予算アラートを使うことで Google Cloud の適正利用に繋がります。サービスの高額請求を回避したい場合には、予算アラートが有効な武器の一つになると言えるでしょう。
Google Cloud の予算アラートを利用するメリット
Google Cloud予算アラートの概要と主要機能
Google Cloudの予算アラートは、設定した予算に対して、現在の利用料金(費用実績)がどの程度達しているかを自動でモニタリングし、設定した閾値を超過した場合にユーザーへアラート(通知)を送る仕組みです。
予算アラートは主に以下の3つの構成要素から成り立っています。
| 予算 | コスト管理の目標となる金額です。特定の固定額を設定できるほか、「先月の費用」に基づいて自動で予算を設定することも可能です。 |
| 閾値(しきい値) | アラートを通知するトリガーとなる基準です。例えば、予算額の「50%」「100%」といった割合で設定し、その割合に達した時点で通知が送られます。 |
| アラート | 閾値を超えた場合に送信される通知です。原則としてメールで通知されますが、Google CloudのサービスであるCloud Pub/SubとCloud Functionsを組み合わせることで、Slackなどのメール以外の通知チャネルへ送るようカスタマイズすることも可能です。 |
予算アラートを設定するメリット
予算アラートを導入することで、Google Cloudの運用において以下のような大きなメリットが得られます。
| 予期せぬ高額請求の防止 | 利用料金が設定した閾値にした時点で通知を受け取れるため、予算を超える前の段階で利用状況を確認し、リソースの停止や設定の見直しといった対策を講じることができます。これにより、安心してサービスを利用できるようになります。 |
| 不正利用の早期検知に役立つ | 通常の利用パターンから逸脱した急激な費用増加があった場合、アラートが即座に通知されます。これにより、万が一アカウントが不正利用された場合でも、異常を早期に検知し、迅速な対応(アカウントロックやリソース停止など)を行うことが可能になります。 |
| リアルタイムなコスト状況の把握と意識向上 | 毎月発生するコストを常に把握し、予算達成度をモニタリングすることで、プロジェクトメンバーや利用部門全体のコスト意識の向上に繋がります。 |
| コスト管理の適正化 | 予算と実績の乖離をリアルタイムで確認できるため、無駄なリソースや設定ミスを早期に発見しやすくなります。限られた予算内でGoogle Cloudのコストパフォーマンスを最大化するために不可欠なツールです。 |
Google Cloud予算アラートの具体的な設定方法を解説
Google Cloudの予算アラートは、管理コンソールから以下の手順で簡単に設定できます。
設定には「請求先アカウント管理者」の権限(billing.budgets.create)が必要ですので、事前に権限を確認しておきましょう。

ステップ1:Google Cloud Consoleへのアクセスと「お支払い」セクションの選択
- Google Cloud Consoleへアクセスし、ログインします。
- ナビゲーションメニュー(左上の三本線)から**「お支払い」**メニューを選択します。
- 「お支払い」画面のサイドメニューから**「予算とアラート」**を選択します。
ステップ2:「予算とアラート」の作成
- 「予算とアラート」画面で**「予算を作成」**ボタンをクリックします。
- 予算名(例:「月次GKE予算」「開発環境コストアラート」など)を入力します。
- 期間(月次、四半期、カスタム期間など)を設定します。
ステップ3:予算範囲の設定
予算をどの範囲の利用料金に適用するかを設定します。
- 請求先アカウント全体に適用するか、特定のプロジェクトに限定するかを選択します。
- さらに、予算の対象を特定のサービス(例: Compute Engineのみ、BigQueryのみ)に限定したり、ラベルやリージョンで絞り込んだりすることが可能です。(予算の範囲設定画面でこれらのオプションが表示されます。)
ステップ4:目標予算額の設定
アラートの基準となる目標予算額を設定します。
- 予算タイプをプルダウンから選択します。
- 固定額: 任意の金額を目標金額として入力します。
- 先月の費用: 前月の利用料金を自動的に目標金額として設定します。
- 選択した予算タイプに基づき、「目標金額」の欄に適切な金額を入力します。この金額がアラートの基準となる「予算」となります。
ステップ5:アラートのしきい値と通知設定
アラートのトリガーとなるルールと、通知方法を設定します。
- 閾値ルールの設定:
- アラートを通知するトリガーとなる**「予算の割合」**(例: 50%, 90%, 100%など)を入力します。
- 「トリガー対象」は、費用が**「実値(Actual)」**でその割合に達した場合にアラートが送られるように設定します。(予測(Forecast)に基づいて通知を出す設定も可能ですが、まずは実値での設定が一般的です。)
- 「閾値の追加」から、警告(例:50%)や緊急(例:100%)など、複数の閾値を追加設定することを推奨します。
- アクション(通知)の設定:
- メールでアラートを受け取りたい場合は、「メール通知アラートを課金管理者とユーザーに送信する」にチェックを入れます。
- 課金管理者やユーザー以外(システム管理者など)に通知を送りたい場合は、Cloud Monitoringを活用して通知先(メールアドレス)をカスタマイズすることが可能です。
- Slackなどメール以外の方法で通知したい場合は、Cloud Pub/Subへの公開設定を行い、Pub/SubからCloud Functionsなどへ連携する仕組みを構築します。
設定が完了したら、「作成」ボタンをクリックし、予算アラートが管理コンソール上に表示されていることを確認します。
予算アラートを最大限に活用するコスト管理術
予算アラートは設定するだけでなく、その後の運用と組み合わせることで、より強力なコスト最適化ツールとなります。
定期的な予算見直しと調整
ビジネスの状況、トラフィック、プロジェクトのフェーズは常に変化します。予算アラートの予算額や閾値は、これらの変化に合わせて定期的に見直すことが重要です。アラートが過剰に発生すると通知が形骸化し、本当に重要なアラートを見逃す原因となるため、不要になったアラートは削除し、常に適切な基準でモニタリングできるように調整しましょう。
コストブレイクダウンレポートの活用
「予算とアラート」の画面では、予算に対する費用の進捗状況だけでなく、サービス別、プロジェクト別、リージョン別などの詳細なコストブレイクダウンレポートを確認できます。アラートが通知された際は、この詳細レポートをチェックし、どのサービスが、なぜ予算を超過しているのかを速やかに特定し、対策を講じることが重要です。
複数のアラート設定の推奨
一つの予算に対して、複数の閾値を設定することで、段階的な対応が可能になります。
| 警告(例: 50%〜80%) | 費用が順調に利用されていることを確認し、予算内で収まるか予測するフェーズ。 |
| 緊急(例: 90%〜100%) | 予算超過が目前に迫っていることを知らせ、緊急のリソース停止や設定変更を検討するフェーズ。 |
このように複数のアラートを設定することで、早期に問題を検知し、慌てることなく対応することができます。
プロジェクト単位・サービス単位でのきめ細やかな管理
大規模な組織では、課金アカウント全体だけでなく、プロジェクトや特定のサービス(例えば、データ分析部門のBigQuery費用のみ)ごとに予算アラートを設定することを推奨します。これにより、各部門やチームの責任者が自身のコストを直接管理しやすくなり、コスト意識の向上ときめ細やかなコスト最適化が実現します。
FinOpsの導入
クラウドコスト最適化を組織全体で推進するには、単なるツールの設定だけでなく、「FinOps(フィノプス)」という文化の導入が有効です。これは、開発(Dev)、運用(Ops)、財務(Finance)の各チームが連携し、コスト効率、透明性、予測可能性を高めることを目指す運用モデルです。予算アラートはその第一歩として不可欠ですが、真の最適化には、チーム間の連携による利用ルールの策定や、不要なリソースを継続的に特定・削除するプロセスが必要です。
まとめ:賢いGoogle Cloud運用で予期せぬコスト増を防ぐ
Google Cloudの予算アラートは、従量課金制というクラウドサービスの特性を理解し、高額請求の回避や不正利用の早期検知を実現するための、最も基本かつ強力なツールです。
本記事で解説したステップで予算アラートを導入し、さらに定期的な見直しや複数のアラート設定といったコスト管理術を組み合わせることで、貴社のGoogle Cloud運用は格段に健全化されます。
弊社センティリオンシステムは、クラウドコスト最適化の豊富な実績と高い技術力を有するクラウドインテグレーターとして、Google Cloudのコスト管理を支援しています。ランニングコストを抑えたい方、予算アラートの設定や効果的な活用方法に疑問・不安をお持ちの方は、お客様の状況に応じた最適なアドバイスやコンサルティングが可能です。
具体事例
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